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【映画と奇談 #3】戦慄の実話! 米の刑務所で起きた衝撃的な「2人のウエスト騒動」とは?

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合成による“双子”映画


稀代の人気俳優レオナルド・ディカプリオは1998年に『仮面の男』でルイ14世とフィリップという瓜二つな双子の役を演じ、


香港のスター、ジャッキー・チェンもまた名作『ツイン・ドラゴン』において、合成技術の駆使に助けられながらも、印象的な双子の活躍を体現した。


異なるケースで言えば、ジェームズ・キャメロン監督は『ターミネーター2』の撮影でリンダ・ハミルトン(サラ・コナー役)の双子の姉であるレスリー・ハミルトンを起用することで、見事にリアルな分身のシーンを完成させている。


映像の加工を必要とせず、よりリアルな“分身映画”の完成を求めるなら、ジャッキー・チェンやディカプリオと“ほぼ同じ容姿”を備え、なおかつ彼らのように迫真の演技が可能な俳優をキャスティングすれば事足りるはずだが、それはファンタジーな願いだろう。


しかし、今から紹介する事例は決してファンタジーでもなければ、血の繋がった双子のストーリーでもない。


100年以上も前のアメリカ、カンザス州の刑務所で起きた、誰もが唖然とさせられる驚愕の実話である。

 

 

 

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目と耳を疑う衝撃

 

1903年、カンザス州のレブンワースと呼ばれるとても大きな刑務所に1人の黒人が収容されたことから全ては始まった。


ウィル・ウエストという名のその男が刑務所に到着するやいなや、レブンワースの帳簿係として勤務していたマクローリーはすぐさま疑問を感じる。というのも、ウィル・ウエストとよく似た名前で、なおかつ彼とソックリな黒人を何年か前にも帳簿に記録した覚えがあったからだ。


そこで、マクローリーはウィルにこう尋ねた。


「お前、以前もこの刑務所に来たことがあるか?」


不思議な表情でウィルは返した。


「何を言ってるんだ? 俺はこんなところに来たことはない


囚人の嘘と悪態にすっかり慣れきっていたマクローリーは自身の記憶を信じ、過去の帳簿をさかのぼると、やはり2年前にウィルと同じ顔の写真と記録が記されていた。しかも名前は“ウィリアム・ウエスト”だ。


「ほら見ろ! これはお前の写真じゃないか。ウィル・ウエストとは、ウィリアム・ウエストのことだろ!」


ここでウィルの顔はさらに怪訝なものとなった。彼は2年前に帳簿に記録されたという自らの顔写真と記録を確認し、次のように述べる。


「その写真は確かに俺に似てるが、なぜそんな写真があるんだ? とにかく俺はここに来たことなんてない。何なんだそのウィリアムって男は!」

 

同一人物か、それとも……

 

困惑したマクローリーが次に選んだ方法はひとつ、ベルティヨン測定法と呼ばれる個人識別システムだ。DNA鑑定という絶対的な識別方法が存在しない当時において、ベルティヨン測定法は最も普及した個人特定手段であり、ウィル・ウエストの“虚言”を暴くには打ってつけの方法だと考えられた。


実際、書類に記された「2年前のウィリアム」と、今目の前にいるウィルとを、あらゆるカラダの部位や身体的特徴において比較した結果、彼らは“データ上”同一人物だとされたのだ。


しかし、これは最終的にベルティヨン測定法が“数少ないミス”を犯した瞬間だった。


なぜなら「2年前のウィリアム」は殺人罪によってレブンワース刑務所に収容されており、1903年にウィルがやってきた時点においても、まだ同刑務所内で服役中だったことが判明したのだ。


つまり、彼らは同じ刑務所内に同時に存在する完全な別人ということになる。


当然ながら、帳簿係のマクローリーは何度も自身の目をこすり、殺人罪で服役している「ウィリアム・ウエスト」を確認し、やってきたばかりの「ウィル・ウエスト」もその後にもう一度確認した。


「何をジロジロと見てんだよ、この野郎」


これは殺人罪で服役中だった「ウィリアム・ウエスト」のセリフである。

 

「2度見必至」の衝撃写真

 

真面目な帳簿担当であるマクローリーの名誉の為にも、ここで実際の2人を比較した貴重な写真を紹介する必要があるだろう。彼がいかにウィルの発言に“納得できなかったか”が、ひと目で理解できるはずだ。

 

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帳簿係が疑うのも無理はない? 英紙Daily Mailより引用

 

向かって左側が1903年にレブンワース刑務所へ収容された「ウィル・ウエスト」であり、右側は2年前から殺人罪で服役していた「ウィリアム・ウエスト」である。


かつてこの騒動を紹介した英紙Daily Mail「Spot the difference?(完全に同一人物としか思えない)」と銘打ち、多くの読者を震撼させている。

 

 

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“お粗末だった”ベルティヨン測定法

 

このあまりにもミステリアスな事件が世間に与えた影響は2つだ。


1つは、個人特定システムとしてのベルティヨン測定法に“大きな懐疑の目”が向けられたこと。


そして2つ目は、この世界に奇妙な“同じ人間”が複数存在するのではないかという都市伝説の勃興である。


もちろん警察の科学捜査班が真剣に考慮しなければならないのは1つ目の新たな潮流だろう。それまで絶対的な信頼を寄せられ、犯人特定には欠かせない手段と考えられていたアルフォンス・ベルティヨン氏考案の測定法が大きなミスを犯したことで、異なる手段を選ばなければならない状況となったのだ。


しかも、ベルティヨン測定法がハッキリと示した“同一人物”は、あろうことか同じ刑務所に同時期に存在するという救いようのない誤ちとなってしまった。


言うまでもないが、「2人のウエスト」騒動は、あらゆる捜査班がベルティヨン測定法の使用を控え、格段に精度の高い指紋認識へと移行するまさにキッカケとなった出来事なのだ。


ちなみにベルティヨン測定法を編み出したフランスの天才アルフォンス・ベルティヨンは、それはそれは優秀な警察官僚で、かの有名なコナン・ドイルが1901年に発表した長編小説『バスカヴィル家の犬』にもその名前が引用されるほど。


同作に登場するシャーロック・ホームズの依頼人は、ホームズの推理力を褒め称える際に「あなたはアルフォンス・ベルティヨンに次いで、ヨーロッパで2番目の天才だ」と絶賛する一幕がある。

 

いずれにせよ、指紋認識の採用や近年におけるDNA鑑定の普及によって、少なからず冤罪や誤認逮捕のケースが減少傾向となったのは、「2人のウエスト」騒動がもたらしたポジティブな遺産といえるだろう。


ド派手なCGや合成技術が蔓延し、ミリ単位の脚色を競い合う現代の映画界において、もしも「2人のウエスト」が同じ作品に出演していれば、過剰な演出も映像の加工も一切必要とせず、さらにいえば、“マクローリー役”はたとえ素人でも問題ないだろう。


目の前にたたずむ2人のウエストを目の当たりにすれば、どんな鈍感な人物であろうと自らの肉眼に疑いの念を抱き、監督も"一発OK"を出さざるを得ない最高のリアクションを表現することになるはずだ。

 

 

 

 

 

 

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